役者さんたちの出来がいろいろで、全体的に正直まとまりのない感じを受けた。
アンサンブルなどでも、キャラはそれぞれ立っているのだが、
それが集結していない感じ。
特に顕著にその雰囲気が感じられた場面は、『プリマドンナ』。
ここでは、キャラがそれぞれ面白い感じに仕上がっているのにも関わらず、
盛り上がりに欠けた。
この場面は、それぞれの思惑が絡み合いながらも、最後には「いざ、幕開けの時!!」
って思いが重なった瞬間のパワーが魅力的なのに、そのパワーがあまりなかった。
それぞれ、自分の演技を暴走させすぎた感じ? うまく表現できないが・・・
個々の演技だけでなく、調和ってものすごく大事なんだなーと感じさせられた。
それにしても、こんな強烈な個性がぶつかり合って、それぞれが歌の超実力派なのに、
潰しあうことなく調和させることができたりするんだから、凄いよな!
今更ながら、思った。
今回の収穫としては、今まで見えにくかった高井ファントムの内面が、
ようやく見えてきたってことか。(遅っ)
今回の高井さんは、後半で歌が非常に苦しかった。
なのに、私にとってはそれが良い方向で働いたのかもしれない。
苦しいファントムの感情が歌声にシンクロして、力任せで裏返り気味の歌声が
絶望や恨みの爆発にも感じられたから。(爆)
歌声の評価は多分悪いのであろうが、感情がかなり込められていて、それが不調の
歌声をフォローしていた。
今回は今まで観た中での高井ファントムのベストだった。
特に1幕最後の絶望、放心状態や2幕での恨み抱いている声や様子が、
静かで不気味な怖さを感じさせて、なかなか良かった。
高井ファントムって、最初は優しい先生という雰囲気だ。
その先生的な雰囲気が、クリスティーヌからすると大好きな父親と重なるところが
あるから、魅かれていってしまう。
比重は、甘い囁きが魅力のエンジェル < 私のパパと重なるエンジェル。
なので、高井ファントムの場合、クリスティーヌが「パパなのかしら」とファントムを
錯覚してしまうところに妙な説得力を感じて、ああ結局はクリスティーヌも父親の愛を
求めているところがあるんだなと、ファントムを通して父親のような優しさや愛を
求めていたのかと思わせる。
優しく厳格な先生的存在の高井ファントムは、クリスティーヌに愛しいパパを感じさせる
存在なのではないだろうか。
超越した魅力的な男性、エンジェルとしてクリスティーヌを誘惑している
佐野っちファントムとは、明らかに違うなぁ。
佐野ファントムの場合、クリスティーヌはファントムに対して
「優しく包み込む、素晴らしい歌声の方」という強い想いが芯にあり、
あくまでも父親が贈ってくれたエンジェルという、偉大な存在。
クリスティーヌがファントムをパパだと錯覚したのも、ファントムがクリスティーヌを
引き寄せるために、父親を感じさせるような囁きで操っているような印象を抱いた。
こちらは、クリスティーヌの父親的な雰囲気はあまり持っていない。
父親なんて、クリスティーヌの幻想だ!!
結局、人間って魅力的なヤツにはコロっとヤラれるワケよ。
熱に浮かされて暴走しちゃうワケよ。
愛しい父親の幻想と重ねちゃうことだって、あるさ★
怪人、エンジェル、誘惑魔術師、ボク佐野ファントム。
ちなみに、高井ファントムは、1幕最後でクリスとラウルのラブラブ歌声を聴いた時の
耳を塞いで「イヤイヤー」と首を振る様子が、妙に可愛い。
とにかく、高井さんは声をかなり酷使している感じを非常に感じたので、
このまま使い続けるのは・・・
と思っていたら、しばらく後で村ファントムに交代。 今も村さん公演中。
高井さん、ゆっくり休んで下さい。
岸ラウルは・・・ ゆる王子だな。
ゆるい。
歌い終わりがやはり不安定だし、妙にテカっている。(爆)
「 か わ い い ロ ッ テ ッ っ っ っ ! ! 」
のカクカクした言い方が、ツボヒットだった★
伊藤クリスは・・・・あれ?
前の方が演技良かったような気がしますが。
あんまり感情が伝わってこない。
だからかもしれないが、最後の方のアンサンブルとか、何か盛り上がらなかった。
(これはクリスだけの問題ではないところもあるが。)
高音は綺麗なのに・・・
小泉フィルマンは、パワーアップ。
笑顔が多くなり、感情表現が豊かになっていた。
いやー。小泉フィルマンは好きだなー。
そして、やっぱり平良ブケーの声がいい!!
渋くて深みのある、好みの声だわ。
あと、ファントムが『ドンファンの勝利』のスコアを投げて渡すところで、
アンドレが受け取るのだが、今回は落としてしまっていた。
結構距離と高さがあるのに毎回見事に受け取っていて、上手く受け取るもんだなーと
感心しながら見ていたから、今回初めて落とすところを見て、かなり新鮮だった。
アンド、なかなか見れないモノを見たから、ちょっと得した気分(爆)
そりゃあ人間だもの。 落とすことだって、あるよね!!
もちろん、落とした後のアンドレさんの後処理は、見事だった。
終盤のアンサンブルは、やはりちょっと迫力不足だったけど、
高井ファントムにお父さん的な哀愁を感じて、かなり落涙してしまった。